陰の物(大学生)、人生初美容院にいく
※この記事は7月の終わりくらいに執筆したけど、なんとなく公開を渋ってたやつです。
強い日差しが引きこもりがちな僕の肌を刺激する、文月のある日の昼頃。僕は、ひとつの決心をしていた。
「まともな美容院に、行こう」
気がつけばコロナが世界中で流行し、不要不急の外出は自粛を強いられていた為、外に出る用事と言えば飯を食べに行くかバイトに行くかだけになっていた。
髪なんて、5月の頭に切ってから長い事切りにいってなかった。お陰様で髪の毛は伸び放題になり、ART-SCHOOLの木下理樹やゲス極の川谷顔負けのマッシュヘアーが完成形へと近づいていた。日に日に前髪で前が見ずらくなって来る。
そろそろ髪を切らないと不味いなと思っていたのだが、月イチで通っていた友達の親が経営している2000円の散髪屋のお父さんが体調を崩した(not コロナ)らしく、暫く休業することに。正直、コロナよりこういう病気の方が怖い。
という訳で、近所に良い散髪屋さんがないかな...とバイト帰りに駅前を彷徨っていた時だった。俺の目は唐突に、駅前のとある美容院に止まった。
「男性歓迎」と看板にデカデカと書いてあるその美容院に、シンパシーに似た何かを感じた俺は、その日のうちに○天beautyでお店を予約し、明日が来るのを待つ事に。
でも、こんな陰の者であるオタクが行って、店の中に気まずい雰囲気が流れないだろうか。そう考え出すと、急に不安が俺を襲ってくる。
その日の夜は、不安から夜も8時間しか寝れなかった。
...ぐっすり寝れてしまった俺は、能天気に歯を磨き、食パンと適当に作ったスクランブルエッグと野菜ジュースを胃袋にほりこむ。
まぁここまではいいとして、最も悩んだのが服装である。
最近は授業もオンラインで家から出ることも無いので、コミケなどで買ったはいいが着る機会を失っていたKey作品系のTシャツばかりを着ていた。
でも、行き先はシャレた紳士淑女が行くような高貴な場所である。アニメTシャツなんか着ていこうもんなら服をビリビリに破かれた後おちんぽ切断dismされるのは目に見えている。
程度オシャレをしてかないと足元見られそうで嫌だが、自分にセンスがないのは承知の上である為、前にバリオシャレな友達に選んでもらったコーディネートをそのまま着込み、お店へ向かった。
お店のドアを開けると、フワッと甘い香りが俺の鼻を刺激してくる。この匂いはまるで、、、初恋の香り、、、?!
なんてアホみたいな事を考えていたら、僕の担当になる美容師さんが来た。案の定男の人だった。恋もクソもねぇわボケ。
担当美容師Mさん(以下M)「初めまして、れおのらさんを担当させて頂くMと申します。」
れおのら(以下れ)「(うわ、何このイケメン......何故ジャニーズじゃなくてこんな僻地の美容院におるん......)よろしくお願いします」
M「取り敢えず、このオーダーシートにご要望などのご記入お願いします〜」
そう言って、Mさんから紙とペンを受け取った。なんか、どういう髪型にしたいかとか、会話は好きかとかを聞かれるらしい。
ただ、漠然としたイメージを持たずに美容院に来たので、髪型の希望なんてない。今の俺に夢はあるが希望はない。何の話やねん
とりあえず、空欄にしておく。次に会話が好きかどうかという欄。あまり美容師と話したくないという寡黙な方(or俺みたいな陰キャ)の為に、会話をしたくない場合はチェックを入れろと書いてある。ぬかりねぇ。
ただ、自分は人の過去の話とかを聞いて自分の創作に取り入れるのが好きなので、チェックを入れといた。
そして間もなく、奥の席へ通される。そこには女の人が待機していた。
すると、何も言わずに椅子を倒し、俺の頭をわしゃわしゃと洗い始めた。なんだお前、誰に許可得て頭洗ってんだ。気持ちいいからいいけど。どうでもええけど、他人に頭洗ってもらう瞬間って人生で最高に幸せな瞬間の一つだと思う。なんていうの、日ごろから頭を色んな場所で使ってるから、老廃物も溜まる訳で。それを自分で一掃せずともきれいになるんですよ。最高じゃん。異論反論認めない。
まぁ多分、濡れてるほうがカットしやすいんだろうな。散髪屋でも髪をスプレーで濡らしてから切るしな。
そして、間もなく洗い終わったのか、席が元に戻される。お姉さんが俺の席の前に立ち、無言でMさんが待つ席の方を指さす。この人、もしかして閻魔王と悪魔の契約を交わす代わりに言葉が喋れなくなったのだろうか......。
M「お待たせしました~、担当のMです、よろしくお願いします。」
れ「よ、よろしくお願いします!(オタク特有の甲高い声)」
M「今回このお店が初めてということで、新しいヘアスタイルを私と見つけていきましょう」
いや、僕はお兄さんとの未来を見つけていきたいな.......
......ちょっと待て、俺はちゃんと彼女もいるノンケ男だぞ。こんなところでイケメンに落とされてたまるか。僕の推しは彼女、僕の推しは彼女......
M「どんなヘアスタイルがご希望で?」
れ「マッシュまではいかなくていいんですけど、ちょっと長めのヘアスタイルのほうが似合う気がするんで、長めで……」
M「あ~、たしかに......そうだ、僕似合う髪型思いついちゃいました。ちょっと好きにやっちゃっていいですか?」
れ「(なんだこの頼もしい男......)やっちゃってください......!」
そういって、Mさんはてきぱきと僕の髪を切り始めた。それと同時に会話もスタート。
M「何歳なんですか?」
れ「18です」
M「え、わか!なんかまぶしい……」
れ「いやお兄さんも十分若いじゃないすか……!」
M「そんな、僕もう26ですよ...…」
れ「いや滅茶苦茶若いじゃないすか、結婚はまだなんですか?」
M「いや僕5年彼女いないんですよ......」
れ「え!遊んでるとか?w」
M「失礼な!こう見えて滅茶苦茶真面目ですよ!」
ここでれおのら的好感度が50くらい上がった。こんなイケメンで彼女もいないのに遊んでないって......世間はなぜこの男に目をつけない......。
M「今の一回生って大変ですよね……。外とか出てます?最近」
れ「リアルにバイトくらいでしかでてないですね」
M「バイトやってるんだえらい!どんな奴やってるんですか?」
れ「こうみえて本屋さんやってるんですよ」
M「ぽい!!!ぽいぽい!!!めっちゃやってそう!!!イケメン店員さんとして有名になってそう!!!」
れ「あなたに言われたら皮肉にしか聞こえないですわ......w」
M「なんでよw僕も本割と読むんですよ」
れ「ほんますか!誰とか読んでるんですか?」
M「こうみえて、村上春樹が大好きで……。」
れ「いやまじか……。どの作品が好きなんですか」
M「わかるかわかんないですけど、スプートニクの恋人って作品がヤバいくらい好きです......」
れ「そこきたか......」
こう見えてハルキストと来た。なんだこの櫻井翔に福士蒼汰を足したような最強の男。女子ウケ抜群の要素しかないやんけ。あんたバケモンだよ。
こんな他愛もない話をしていると、いつの間にかカットが終わっていた。
M「こんな感じでどうですか?」
そういわれて鏡を見てみると、そこには別人がいた。
写真を貼って見せたいが、こんなブログの中の人を見たい人なんていないだろうから自重する。イメージ的には、パーマ当ててない福士蒼汰って感じ。ナルシストではないが、自分を初めて「カッコイイ」と思えた。Mさん、あんた天才か...?
最後にまた例の寡黙の女に頭を洗ってもらい、お会計。今度は一切喋らないのかと思いきや、
「ありがとうございました」
とだけ僕に告げてくれた。閻魔様に声を奪われていただけではなかったようだ。
今回は初回だから30%オフとのこと。いや満額払わせてほしい。すごい良かった。ほんとに。
お会計が終わり、店をでようとすると名刺を渡され、
M「周りの友達にも、良かったら僕の事紹介してください」
とニコニコしながらMさんに見送られた。
いや言われんくても紹介しまんがな。安心せい。全員に広めたるわ。
結論
オタクでも美容院にいくのを躊躇わずにどんどん行くべき。むしろ行った方がいい。自尊心が自動的に高まる。
以上です、ほなまた。